四方を山々に囲まれた雄勝野(おがちの)は、日照時間が少なく、降雪の時期が早いため、漬け物造りのための秋大根を天日で十分に干すことができません。
そのため、大根を屋内の梁(はり)につり下げ、囲炉裏火の熱と煙を利用して干し上げて漬け込む”燻り(いぶり)漬け”が造り継がれてきました。
囲炉裏火で燻煙乾燥することで風味と保存性が高まり、さらに初冬の低温下で漬け込むことにより、この地方の雪深く長い冬を越してまでも食べることができました。
このいぶり漬けは、幾多の時代を経て昭和30年代に薪ストーブが普及するまで雄勝野のほぼ全戸で造られており、その起源は古く室町時代からとも伝えられています。
冬場のなくてはならない常備食として人々の健康を支え、酒の肴やお茶うけとして人々の語らいの場に欠かせないものでした。
この地方で大根漬け(でごづげ)といえば、このいぶり漬けのことをいい、冬から春にかけてごく日常の食べ物でした。